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太陽光発電による炭素クレジットを創出。オフセット取引市場への期待

環境問題に取り組むためには、テクノロジーの力を借りることが重要です。太陽光発電を利用して炭素クレジットを創出する技術も、環境問題の解決に向けて大きな貢献が期待されています。この記事では、テクノロジーを活用した環境問題解決の一例として、太陽光発電に注目し、解説します。未来に向けた地球環境のために、ぜひご一読ください。

炭素クレジットとは何か?

炭素クレジットの定義と概要

炭素クレジットは、企業や個人が自らの温室効果ガス排出量を、温室効果を削減量あるいは吸収・固定量とで相殺することができる仕組みです。炭素クレジット=環境価値を取引することで、優れた技術・サービスに経済的投資が振り向けられる、優れたスキームです。国連も提唱し、日本含む世界各国で促進されています。

単位がCO2eトンなどで取引され、暗号資産(仮想通貨)や地域通貨のような性質と似ています。

日本では、経済産業省・環境省などが連携して創設したJ-クレジット制度が知られています。上の画像のように、国が認証している炭素クレジットの制度であるJ-クレジットのHPでは、売り手が希望した炭素クレジット情報を掲載しています。 (URL:https://japancredit.go.jp/sale/

炭素クレジットは、温室効果ガス排出量の削減を促進し、気候変動対策を支援することを目的としています。これにより、企業は自らの環境負荷を減らすことができ、また、炭素クレジットを生成するプロジェクトは持続可能な発展と地球環境保全に貢献できます。

炭素クレジットを購入する企業は、単にお金で炭素クレジットを使って相殺するのではなく、優れた気候変動対策プロジェクトを応援、支援することになり、まさに「ESG投資」と言えます。

炭素クレジット市場の成長と今後の見通し

政府、企業、個人が炭素排出量を削減するための具体的な取り組みを行っており、その一環として炭素クレジットが利用されています。また、多くの国が国際的な気候変動対策に取り組み、温室効果ガス排出量の削減目標を設定しており、炭素クレジットの需要が高まっています。

あまり知られていない炭素クレジットの取引ですが、炭素クレジット市場は、気候変動への懸念が高まる中で急速に成長しています。日本に比べて、特に、欧米では成長著しく、炭素クレジット市場規模も大きく、年々成長し続けています。

【グラフ1】
出典:経済産業省 環境経済室「J-クレジット制度について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methanation_suishin/kokunai_tf/pdf/001_05_01.pdf

日本でも、炭素クレジット市場はさらなる成長が見込まれます。企業の環境負荷削減への取り組みが強化され、炭素排出量を削減する技術やプロジェクトへの投資が増加することで、炭素クレジットの需要量の増大と、クレジットの価値(取引価格)が高まると考えられます。

しかし、炭素クレジット市場の成長には課題も伴います。炭素クレジットの仕組みや市場は歴史的に新しいため、国や地域によって炭素クレジットの品質や評価基準が統一されていないのが現状です。そのため、実際に温室効果ガス排出量削減に貢献しているかどうかが分かりにくいとして、「不透明さ」を懸念する考え方・専門家の意見も存在します。そのため、炭素クレジット市場の信頼性や透明性の向上していくことが望まれます。

また、炭素クレジットを利用した排出量の削減が、実質的な環境負荷軽減につながっているかどうか、全体の効果を検証、把握が重要であるとする議論があります。一部では、炭素クレジットの仕組みが悪いのではなく、使い手の社会的責任の姿勢によっては、企業の環境への責任回避を助長するリスクを指摘する意見もあります。炭素クレジットの仕組みの設計を、企業・社会・行政が適切にそのメリットとデメリットを理解して、排出量削減の加速に適切につながるような仕組みもブラシュアップしていくことが求められています。

明確なのは、炭素クレジットは気候変動対策の一環として有望な取り組みの一つであることは変わりはありません。そして、これからますます炭素クレジット市場の成長は続くと予想されます。同時に、市場の信頼性や透明性の向上、実質的な環境負荷軽減に寄与する仕組みの構築も急ぐ必要があるでしょう。

太陽光発電と炭素クレジット

 太陽光発電の特徴とメリット

そして、私たちに身近になりつつある太陽光発電に話題を移します。

太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する再生可能エネルギーの一種です。太陽光発電を他の火力発電や原子力発電と比べた場合、その特徴として、以下のメリットがあります。

1.環境に優しい

太陽光発電は、石油や石炭などの化石燃料を必要とせず、二酸化炭素の排出が非常に少ないため、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を削減できます。原子力発電の場合、最終処分地問題や、太陽光パネルの原料のレアメタルの採掘問題等、負の課題もあります。

2.持続可能性

太陽光発電は、太陽エネルギーを利用するため、資源が枯渇することがありません。持続可能なエネルギー供給が可能です。

3.低運転コスト

太陽光発電システムは、設置後の運転・維持コストが低いため、導入メリットがあります。

太陽光発電から炭素クレジットを取得する方法

太陽光発電プロジェクトで炭素クレジットを取得する方法は、プロジェクトが温室効果ガス排出量を削減または排出抑制することを証明することです。これには、以下の手順が含まれます。

1.プロジェクトの企画: 太陽光発電プロジェクトの「排出削減量」の計画と目標設定を行います。
2.測定・報告・検証(MRV)プロセス: 独立した第三者機関による排出量削減効果の測定、報告、検証を行います。
3.クレジットの発行: 認証された排出量削減効果に基づいて、炭素クレジットが発行されます。

炭素クレジットと太陽光発電の関係性とビジネスの可能性

炭素クレジットと太陽光発電の関係性は、太陽光発電プロジェクトによる温室効果ガス排出量の削減が炭素クレジットの生成につながることにあります。太陽光発電プロジェクトは、化石燃料に依存する従来の発電方式に比べて温室効果ガス排出量が少ないため、炭素クレジットの取得が可能です。炭素クレジットを取得することで、太陽光発電プロジェクトはさらなる収益源を得ることができます。

このビジネスの可能性は、太陽光発電プロジェクトが炭素クレジットを取得し、それらを企業や個人に販売することで利益を上げることができる点にあります。また、企業は太陽光発電から生成された炭素クレジットを購入することで、自らの温室効果ガス排出量を相殺し、環境に対する責任を果たすことができます。さらに、太陽光発電プロジェクトへの投資は、地域社会や雇用創出にも寄与し、持続可能な開発を促進します。

ただし、炭素クレジット市場の規制や透明性の向上が求められる中、太陽光発電プロジェクトによる炭素クレジットの取得・販売においても、品質や評価基準の統一が重要となります。これにより、炭素クレジット市場の信頼性が確保され、太陽光発電と炭素クレジットを組み合わせたビジネスの発展が期待されます。

国内外の事例紹介

国内の太陽光発電炭素クレジット事業の最新動向

日本では、太陽光発電と炭素クレジットを組み合わせた事業が次々と展開されています。以下は、国内の最新動向を紹介します。

大手電力会社の取り組み

日本の大手電力会社であるソニー株式会社は、自社事業所における太陽光発電設備がもたらす環境価値は、グリーンエネルギー証書の他に、J-クレジットも積極的に取得しています。これにより、企業は自らの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることができます。

地方自治体の取り組み

いくつかの地方自治体では、太陽光発電プロジェクトを活用して炭素クレジットを取得し、その収益を地域活性化や環境保護に役立てています。岡山県津山市では、​​家庭向けに太陽光発電を促進し、各家庭から生み出されたCO2削減量を津山市が取りまとめてJ-クレジットを申請する取り組みなどが見られます。また、自治体が発行する炭素クレジットを購入することで、地域住民や企業が環境に対する貢献を行うことが可能です。

海外の最新動向

海外でも、太陽光発電と炭素クレジットを組み合わせた事業が盛んに展開されています。以下は、その最新動向を紹介します。

二国間クレジット制度

二国間クレジット制度はJCM(Joint Crediting Mechanism)とも呼ばれ、環境省が推進している事業制度です。日本の持つ先進的な低炭素技術・製品・システム・サービス・インフラなどを新興国等に提供し、その成果をクレジットとして二国間で分け合う制度です。二国間クレジット制度は、太陽光発電含めた再生可能エネルギー、省エネ事業によって温室効果ガスの排出削減量を算定、報告し、パートナー国とその成果を分け合うことにより、日本の温室効果ガス削減目標の達成にも貢献します。実際に、各国で、太陽光発電が工場やスーパーの屋根置きプロジェクト等も広がっています。

自動車メーカー(Volkswagen、Daimler 、Boschなど)のカーボンニュートラル

カーボン・ニュートラルに向け、グローバル企業がクレジット調達を発表しています。
太陽光発電と炭素クレジットを組み合わせた事業は、国内外でさまざまな形で展開されています。これらの取り組みにより、持続可能なエネルギー供給や温室効果ガス排出量の削減が促進され、地球温暖化対策が進められています。

今後も、国内外の事例を参考にしながら、太陽光発電と炭素クレジットを活用した新たなビジネスモデルが開発されることが期待されます。また、こうした取り組みが一層の拡大を遂げるためには、炭素クレジット市場の信頼性や透明性の向上が重要となります。さらに、国際協力や技術革新を通じて、太陽光発電のさらなるコスト削減や効率向上が進むことで、より多くの国や地域で太陽光発電と炭素クレジットの活用が進むことが期待されます。

炭素クレジット創出が期待される領域

大規模太陽光発電(メガソーラー)

メガソーラーとは、大量の太陽光発電パネルを使用して、発電所のような規模で電力を生産することを目的としています。典型的には、数千から数百万台の太陽光パネルを使用し、非常に広い土地を必要とします。主に、エネルギー会社や政府が投資して、発電所が所有し、運営します。

住宅用太陽光発電

住宅用太陽光発電とは、屋根や壁面に設置される比較的小規模な太陽光パネルを使用して、個人の家庭で電力を生産することを目的としています。家庭での電力需要を賄うだけでなく、余剰の電力は電力会社に売ることができます。

農地のソーラーシェアリング

ソーラーシェアリングは、営農を続けながら太陽光発電を行う設備です。「営農型太陽光発電システム」と呼ばれることもあります。農地に太陽光発電パネルを設置し、農地を活用しながら農家とエネルギー会社が共同で電力を生産することを目的としています。この取り組みは、農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と太陽光発電の両方を行う仕組みで、立体的に土地を利用するため、効率的に収益を高める事ができます。

乱開発の課題

太陽光発電の普及に伴い、山や農地の乱開発が問題となっています。気候変動による環境破壊の防止を目指す中で、太陽光発電の設置によって環境が破壊されていては元も子もありません。つまり、周辺環境や景観、生態系への配慮が重要となります。適切な環境アセスメントを行い、自然環境への影響を最小限に抑える開発が求められます。また、地域住民との協議やコミュニケーションを重視した開発が望まれます。

さらに、政府や関連機関は、太陽光発電設備の設置基準や適切な土地利用のガイドラインを策定することが重要です。これにより、持続可能な太陽光発電プロジェクトが推進され、炭素クレジット創出と環境保護が両立できる状況が整うことが期待されます。

総じて、炭素クレジット創出が期待される太陽光発電領域は、持続可能なエネルギー供給や温室効果ガス排出量削減に大きく貢献できる一方で、乱開発による環境への悪影響を避けるための取り組みが不可欠です。今後は、より環境に配慮した開発が進められることで、炭素クレジット創出と環境保護の両立が実現できることが望まれます。

まとめ

太陽光発電を利用した炭素クレジット創出は、環境問題に対する有効な手段として注目を集めています。この技術は、二酸化炭素の削減だけでなく、枯渇することのない資源を利用した持続可能なエネルギー供給など、多様な便益をもたらす可能性があります。

今後、デジタル技術の進歩や市場の発展、政策的な支援などにより、太陽光発電を利用した炭素クレジット創出の重要性が高まり、市場が成長していくことが期待されます。さらに、環境に配慮した開発が進められることで、炭素クレジット創出と環境保護の両立が実現できることが望まれます。

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