いまやファッションは、個性の表現手段やトレンドの象徴としても、私たちの生活に欠かせない存在となっています。しかし、これらに地球環境への深刻な影響が潜んでいることを知っていますか?衣料品の製造・消費・廃棄において発生する環境問題や社会的問題を指す言葉が「ファッションロス」です。本記事では、ファッションロス問題に焦点をあて、私たちの意識と行動がファッションロス問題への解決策となる可能性を探ります。
いま、なぜファッションロスが問題なのか?
地球温暖化が深刻化する現在、ファッション業界がもたらす環境への悪影響は見過ごせないものとなっています。以下ではファッションロスの現状とそれらが与える環境負荷について詳しく述べていきます。
ファッションロスの現状
ファストファッション・ブームによって、衣料品が短期間で廃棄されることが多くなりました。国内の衣類供給量は増加する一方、衣服一枚あたりの価格は年々安くなり、市場規模は下がっています。(【表1・2】)大量生産・大量消費の傾向が強まり、生産過程で消費される水やエネルギーが増加、埋立地や焼却場に大量の衣料品が廃棄され、廃棄物処理の負担が増加しています。1年間一度も着用されない服は一人当たり平均25着もあり、手放す服の約7割は可燃ごみ・不燃ゴミとして廃棄されています。
【表1・2】環境省HPより引用
ファッション業界が与える環境負荷
上記のようにファッションロスの現状は、厳しいものであるということがお分かりになったかと思います。次は、これらが与える環境負荷をみていきましょう。
一着の衣類を製造するのに、どれほどの環境負荷がかかっているのかご存知でしょうか。まず、原料の調達段階において、天然繊維では栽培時の水消費と化学肥料による土壌汚染、合成繊維では石油資源の使用や工場でのエネルギー使用が負荷になっています。では、原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷を服一着あたりに換算してみましょう。服一着あたりのCO2排出量は、500mlペットボトル約255本製造分、水消費量は浴槽約11杯分に匹敵します。また、年間端材等排出量は服約1.8億着分にもなります。大量生産が進む今、ファッション業界が与える環境負荷はますます増えているといえます。
サステナブルファッションのメガトレンド
以上で説明したように、ファッション業界ではファッションロスが進み、環境へ大きな負荷をもたらしています。これらを解決するべく、環境・社会的に持続可能なファッション産業を目指す取り組みが「サステナブルファッション」です。国内外におけるサステナブルファッションのメガトレンドを詳しく追っていきましょう。
サステナブルファッションによる試み
まず、私たち生活者ができるサステナブルファッションで想像しやすいのが、そもそも一着を長く着ること、そしてリサイクルやリユースによる循環利用です。また、企業の取り組むサステナブルファッションとして、環境負荷の少ない原材料やリサイクル素材の使用、衣類回収ボックスの設置や、長く着られる衣類の生産です。このような、廃棄量の削減、衣類の長寿命化に繋がる取り組みがサステナブルファッションであり、これによってファッションロスを改善することができます。
世界のトップブランド、新星の動向
【Allbirds】
Allbirdsは靴のデザインと販売を行う米国企業です。サトウキビやカニの殻、ペットボトル、リサイクル素材等を積極的に活用し、新しい商品は必ず環境負荷が下がるよう商品設計を実施しています。また、Allbirdsの特徴の一つとして、カーボンフットプリントの徹底があります。製品ごとにカーボンフットプリントを記載し、2022年は製品の平均的なカーボンフットプリントを19%削減しています。CO2排出量の計測、そしてその削減、オフセットも手がけることで、カーボンニュートラル、最終的にはカーボンネガティブを目指しているのです。
【H&M】
世界を代表するファッションブランドのH&Mは、循環型エコシステムの構築に取り組んでいます。ほぼ全ての店舗で衣類の回収サービスを行っており、2022 年には14,768 トンもの繊維を回収しました。他のブランドの衣類も回収可能であり、我々生活者にとってのリサイクルのハードルを大きく下げてくれています。製品やサービス、サプライチェーン、包装や店舗内装など、あらゆるものに対して循環型アプローチを施し、廃棄物や汚染の排除、自然再生にも大きく貢献しています。
国内企業の取り組み
【KAMITO Japan】
KAMITOは、日本古来の製法に基づき製造された、和紙を主原料とする素材・製品のブランドです。和紙は持続可能な資源である針葉樹の間伐材やアバカから作られており、天然繊維でありながら機能性に富んでいます。スポーツブランドのデサントが展開する「RE:DESCENTE」では、KAMITOの素材が使用されており、エコフレンドリーでサステナブルな商品を提供しています。
【株式会社ゴールドウイン】
株式会社ゴールドウインは、長く着られる服作りや、販売した全ての製品のリペアサービスを行っています。キッズウェアやでは成長に合わせて袖丈、裾丈を伸縮調整できるEXP GROW systemを開発し、通常のウェアより1年長く着用可能にしています。 マタニティウェアも同様に、体型の変化匂わせてシルエットの変更が可能な衣類を設計し、一着を1日でも長く、大切に使えるための設計が施されています。
ファッション業界つくる責任・つかう責任
SDGs目標12の「つくる責任 つかう責任」とは具体的にどんな目標かご存知でしょうか。これは、持続可能な消費と生産を構築するための目標です。簡単に言えば、より少ないものでより多くを作り、より良い未来に変えていくことという意味です。“つくる人”である生産者から、“つかう人”である最終消費者まで、資源を有効活用し、廃棄物や汚染の削減を進める必要があります。
ファッション業界において、原材料の調達から製品が消費者の手に届き、さらにはそれが廃棄されるまでの一連のサプライチェーン上の全てに「つくる責任・つかう責任」が関わっています。環境に配慮した原材料の使用や、長く使える製品設計、工場や運搬に関わるエネルギーの削減、廃棄量の削減、再利用の促進が求められます。
企業や会社で取り組むべき問題〜つくる責任〜
「つくる責任 つかう責任」を達成するために、ファッション業界に携わる企業ではどんなことが求められているのでしょうか。まず、資源を無駄なく利用できる循環構造の設計です。回収⇒製糸⇒縫製⇒販売⇒回収の循環を作ることで、必要資源や廃棄量を最小限に抑えることができます。上述した国内外の企業におけるサステナブルファッションの取り組みは、つくる責任を実践している一例です。
また、適量生産、適切な在庫管理も必要です。過剰生産、過剰在庫はファッションロスに繋がります。適切な予測や受注生産により、ファッションロスを減らすことができます。
個人で取り組むファッションロス対策〜つかう責任〜
話題のファッションサービス
買ってみたけど似合わなかった、サイズを失敗した、結局着なくなって捨ててしまった、そんな経験はありませんか?そんなファッションロスを防いでくれるのがファッションのレンタル・シェアサービスです。ファッションロス対策に取り組めるサービスをいくつかご紹介します。
【mechakari】
mechakari(メチャカリ)は月額定額で洋服が借り放題のサービスです。レンタル枠数に応じてプランを選ぶことができ、返却時のクリーニングも不要です。取り扱う洋服は全て新品なので、さまざまなトレンドアイテムを着用したいという20~30代の女性に人気があります。
【airCloset】
airClosetはプロのスタイリストがコーディネートした洋服を月額制で借りられるファッションレンタルサービスです。高品質なメンテナンスで洋服のライフサイクルの長期化を実現しており、消費を制限させつつもブランド各社と消費者の新たな出会いを誘発しています。
【Laxus】
Laxusは20~40万円台の高級バッグのレンタルサービスです。毎年多くのバッグが焼却されている現状を受け、所有から共有へ、廃棄から再利用への移行を目指しています。
環境のために今日からからできること
今日からできるファッションロス対策には何があるでしょうか。
①服の処分方法
まず服の処分方法を考えてみましょう。ゴミに出すのではなくフリマに出してみれば環境にいいだけでなく思わぬ収益にも繋がるかもしれません。他には、お下がりとしてそれらを着てくれる知人や家族を探してみるのも一つの手です。
②服の購入先
先ほど紹介したシェアサービスを利用したり、服の買取サービスのある店舗や通販の選択、長く着用できる衣類、サステナブルな原料から製造された衣類の選択ができます。また、バザーやフリマから購入するのもサステナブルファッションに繋がります。
③本当に必要?
そもそも本当に必要としているかどうか、一度確かめてみましょう。我々の約64%は所有する衣服の量を把握せずに服を購入しています。衝動買いは辞め、クローゼットを見直してしっかりと考えてから、必要な服を買うようにしましょう。
まとめ
本記事ではファッションロスの現状やその環境負荷、ファッション業界のつくる責任・つかう責任について、企業で取り組まれているものや個人で取り組めるものについて詳しく述べてきました。ファッションロスが生み出す環境負荷は著しく、ファストファッションが普及した現代ではその対策が急務とされています。しかし、意識すれば個人が今日からできる行動や選択は多くあります。今一度自分の行動と選択を見直し、サステナブルファッションを心がけてみましょう。
また、弊社では、業種業界を問わずすべての企業がカーボンニュートラルに向けて取り組むことができるEARTHSTORYというサービスを展開しています。このサービスは、企業が削減した二酸化炭素量を計測し、その環境価値を取引することができる画期的なシステムです。
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