プラスチックとは?
一般的に、プラスチックとは石油を原料とした高分子化合物のことを指し、合成樹脂とも呼ばれます。
プラスチックは20世紀初頭に登場し、革新的な素材としてその利用は急速に広まりました。現代でも、包装材料、衛生用品、電子機器、医療機器など様々な消費財製品に利用されており、私たちが目にしない日はないほどに広く普及しています。しかし、その一方で近年はプラスチックゴミに関する問題が取り上げられることも多くなっています。
まずはプラスチックのメリット、デメリットに関して見ていきましょう。
プラスチックのメリット
プラスチックの主なメリットの一つはその耐久性です。プラスチック製品は環境条件に対して耐性を持ち、長寿命であるため、製品の寿命を延ばすのに役立ちます。また、プラスチックは軽量であり、輸送コストを削減し、エネルギー効率を向上させます。さらに、コスト効率の高さや加工のしやすさもプラスチックのメリットとして挙げられます。
プラスチックのデメリット
メリットも多い一方で、プラスチックの普及は環境に多くの課題をもたらしました。
プラスチックのデメリットの一つは、環境への影響です。プラスチック廃棄物は大量に発生し、海洋ごみとして海洋生態系に悪影響を及ぼし、野生動物にも害を及ぼします。また、プラスチックは分解に長い時間を要し、微小プラスチックが生態系に浸透し、食物連鎖に影響を与えるという懸念もあります。
さらに、プラスチックの製造には石油資源が必要であり、その採掘や生産には環境への負担がかかります。プラスチックの製造と廃棄物処理に関連する温室効果ガスの排出も気候変動に寄与しています。
プラスチックゴミ廃棄量
プラスチックが広く普及し生産量が増大していくとともに、プラスチックゴミの廃棄量も増大していきました。世界全体で1950年以降に生産されたプラスチックは83億トンを超え、63億トンがゴミとして廃棄されたというデータもあります。
年間生産量で見ると世界全体では約3.8億トン、日本では約940万トンとなっています。各国の1人あたりプラスチック廃棄量を比較すると、日本の人口1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は世界2位となっており、日本はプラスチックゴミ大国と言えるでしょう。
地球環境、経済への影響
地球環境への影響
1.地球温暖化
プラスチックの製造には石油資源が必要であり、その採掘や生産には多くのエネルギーを必要とします。また、プラスチックがゴミとして処理される過程でも温室効果ガスである二酸化炭素を大量に排出します。そのため、結果的にプラスチックは異常気象を引き起こす原因と言われる地球温暖化に寄与しています。
2.海洋プラスチック
プラスチックはその耐久力と難分解性により、自然界で分解されるのには数百年から数千年かかると言われています。また、非常に軽量で浮力が高いため風や水流によって世界中に広がってしまいます。プラスチック製品は魚や海鳥に誤って摂取されることもあり、生態系内の食物連鎖に大きな影響を与えます。特に、ビニール袋などはクラゲと間違えられることがあり、誤って食べてしまった動物が窒息死してしまうという事例も多くあります。
3.マイクロプラスチック
マイクロプラスチックは、非常に小さなプラスチック粒子または微粒子を指す用語で、一般的には5ミリメートル以下のサイズのプラスチック粒子を指します。これには自然界で分解で微小サイズになったものと生産時点で微小だったものの両方を含みます。
マイクロプラスチックは、大気中や水中、土壌中などさまざまな環境中で発見されますが、特に問題となるのが海洋環境です。微細な粒子が海洋生物に摂取され、食物連鎖の中で生態系に障害を引き起こす可能性があります。その上さらに、魚介類を通じて人間が摂取してしまう可能性もあり健康への潜在的なリスクが懸念されています。
経済への影響
1.漁業・観光業への影響
プラスチックゴミが海洋に流れ込むと、漁具や船舶に絡むことがあり、漁獲の品質や漁業の効率に悪影響を及ぼすことがあります。また、美しい海がプラスチックゴミに覆われると、観光客が減少し地域の観光業に収益損失を及ぼすことがあります。
2.企業評判への影響
プラスチックゴミの問題について消費者が敏感になる中、プラスチックごみの多用は企業の評判に悪影響を与える可能性があります。環境に配慮のある企業がプラスチックごみの削減に積極的でない場合、消費者はその企業の製品やサービスに対する信頼を失う可能性もあります。
プラスチックゴミを減らすための取り組み
日本
1.循環型社会形成
循環型社会とは「廃棄物等の発生抑制と適正な循環的利用・処分により、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会 」を指しており、政府はこのような社会を目指して様々な施策を行っています。
2.具体的施策
2-1.法体系
日本には循環型社会を形成するための法体系が存在しています。具体的には環境基本法の下に循環型社会形成推進基本法が存在しており、さらにその下に廃棄物の適正処理を行うための廃棄物処理法、再生利用の推進を行うための資源有効利用促進法が並んで存在しています。それに加えて、容器包装リサイクル法など個別物品の特性に応じた規制のための法律があります。
2-2.省CO₂型リサイクル等高度化設備導入促進事業
これまでは年間約150万トンの廃プラスチックが資源として中国や東南アジアに輸出されていました。しかし、近年各国が廃プラスチックの禁輸措置を実行したため、国内での廃プラスチックの滞留が問題となってしまっています。これに対する対応でプラスチックの国内リサイクル体制を速やかに確保するため、政府は設備の高度化・効率化の支援を行っています。
それに加えて、急速に導入が進んでいる再生可能エネルギー設備等の低炭素製品の排出に適切に対応するため、エネルギー消費の少ない省CO₂型のリユース・リサイクル設備や「省CO₂型リサイクル等設備技術実証事業」等により実証された技術・ システムの導入を進めており、以上を通じて、低炭素化と資源循環の統合的実現を目指しています。
事業者
事業者は「製造事業者」「販売・提供事業者」「排出事業者」の3つに分けることができます。各事業者はプラスチックゴミを減らすためにどのような活動ができるのでしょうか。
製造事業者 | (1)プラスチックの削減 製造事業者は、製品設計段階からプラスチックの使用を最小限に抑える必要があります。例えばプラスチックの代替素材を探したり、薄肉化を行ったりすることなどがあります。他にも、石油ではなく植物由来の原料から作られたバイオプラスチックを利用することなども実施できます。 (2)リサイクルプログラムの実施 自社のプラスチック製品のリサイクルプログラムを設定し、消費者から使用済み商品を回収してリサイクル処理するための仕組みを整備します。 |
販売・ 提供事業者 | (1)プラスチックフリー製品の提供 プラスチックストローの代わりに紙ストローを提供するなど、プラスチックフリーの製品や包装を提供することで、消費者に環境に配慮した選択肢を提供します。 (2)リフィル/リユースプログラムの推進 リフィル用品やリユーザブル容器を販売し、消費者に使い捨て製品の代わりに再利用可能な製品を使用するよう奨励できます。 (3)包装設計の最適化 商品の包装を最小限に抑え、無駄のない包装デザインを採用することで、プラスチックごみの発生を減少させることができます。 |
排出事業者 | 排出・回収・リサイクルの段階において、「排出事業者の判断基準省令」に基づいた排出の抑制・再資源化等の取り組みをする必要があります。 |
企業の取り組みの具体例
・スターバックス
プラスチック製の使い捨てストローの利用を取りやめ、ストローを使わないふたや紙製のストローを導入。
・ディズニー
使い捨てプラスチック製のストローやマドラーの使用を禁止。ホテルやクルーズ船において、室内アメニティを詰め替え可能なものにすることで客室内のプラスチックを80% 削減する方針。また、プラスチック製の買い物袋の代わりに、再使用可能な袋を購入するオプションを提供。
・レゴ
植物由来プラスチック(サトウキビを原料にしたポリエチレン)を使う製品を投入し、全工場で使用するポリエチレンを植物由来のものに切り替える方針。
・三井住友海上火災保険
社員食堂でのプラスチック製のストローと飲料カップの提供を廃止。
プラスチックゴミを減らすために私たちにできること
・使い捨てプラスチックの代替品を持参する
職場や学校に再利用可能な水筒や弁当、コーヒーカップを持参することでプラスチックごみを削減することが可能です。
・リサイクルの徹底
職場や学校においてゴミの分別を適切に行うことで、プラスチックごみの再資源化が可能となります。コミュニティ全体でゴミ分別の意識を持つことでリサイクルを徹底するのが大切です。
・プラスチックフリー製品の購入
石鹸やシャープペンシルなどの日用品を購入する際にプラスチックの使われていないものを選ぶことによってプラスチックごみの量を減らすことが可能です。
まとめ
本記事ではプラスチックごみ問題の現状やその環境負荷、問題に対する日本の対策方針、企業や個人が問題解決のために取り組めることについて述べてきました。プラスチックごみが生み出す環境負荷は著しく、多くの製品がプラスチックに依存している現代ではその対策が急務とされています。意識すれば個人が今日からできる行動や選択は多くあります。今一度自分の行動と選択を見直し、プラスチックごみを減らすことを心がけてみましょう。
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