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屋根置きPPAはなぜ今注目されるのか①

近年、脱炭素の実現のために再生可能エネルギーをどのように利用していくかは重要な課題となっています。
その中でも太陽光発電は特に注目されていますが、これには一定の土地が必要であり、導入コストがかかってしまいます。そこで最近ではPPAという太陽光発電の導入方法に注目が集まっています。
またその中でも、顧客が自身の屋根や土地に再生可能エネルギー設備を設置する屋根付きPPAは、その導入方法のメリットから特に注目されています。今回と次回の2回に分け、PPAについて詳しくみていきましょう。

屋根付きPPAとは何か?

PPAとは?

PPAとは、「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略で、再生可能エネルギー発電事業者が発電した電力を、電力需要家(企業や自治体など)が長期にわたって購入する契約形態を指します。
このPPAモデルは、もともと大手電力会社が発電事業者から電気を購入する卸売り契約として使用されていました。しかし、日本政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラル実現を含む「環境対策」や、高騰する電気料金対策としての「コスト抑制」を背景に、企業・自治体が発電設備の自己所有や管理の負担を負うことなく、再生可能エネルギー由来の電力を確実に調達する方法として用いられるようになり、近年注目が高まっています。

引用:Linkholaオリジナル画像

屋根付きPPAと自社所有型の違い

太陽光発電の導入には、大きく分けて2つの方法が考えられます。1つ目が自社で設備を所有し、発電した電気を自家消費する方法です。2つ目が、事業者が購入した設備で発電した電気を事業者から購入する方法です。このうちの2つ目がPPAに当たります。それぞれ見ていきましょう。
1つ目の自社で所有する形は、太陽光設備を自社の資金で購入し、自社の所有物として自由に設備や電気を使える方法です。設備や設置にかかる費用を自社で負担したうえで、運用・管理・保守などにかかる費用や手間もすべて自社で負担します。初期コストやメンテナンスコストはかかるものの、設備や発電した電気を自由に使えるため、月々の電気代を大きく減らすことが可能だと言われています。
一方で屋根付きPPAは、PPA事業者が購入した設備を自社の屋根や敷地内に設置し、発電された電力を事業者から買い取るモデルであるため、「第三者所有モデル」と呼ばれることもあります。
設備の購入だけでなく、設置、保守、管理まですべて事業者が行ってくれるため、自己投資型のように膨大な導入コストや手間がかかることはありません。電気を使用する企業は、電気の使用量に応じて事業者に料金を支払うことになります。

どちらがより良い導入方法になるかはケースによって異なり、一般的には資金に余裕があり、かつ電気代をより多く削減したい企業には自社所有型が。設備を導入するための資金を用意できない企業や、少ないコストで再生可能エネルギーを導入したいと考えている企業はPPAを用いることが良いとされています。
自社所有型は初期に膨大なコストがかかるものの、電気を買い取る必要がないため、電気代0円を目指すことも可能です。もしも自社で発電した電気が余った場合、販売して売電収入を得ることもできます。電気代の高騰が続く中で、長期的なコストメリットを得たいと考えている場合におすすめされています。

PPAの特徴

PPA導入のメリット

PPAを導入することにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきます。
大きく5つのメリットをあげます。
1.太陽光発電を初期費用がかからずに導入できる
太陽光発電の導入にかかる価格相場は、2022年時点で1kWあたり約17万円です。家庭よりエネルギー消費の大きい企業は、大きい単位で電気設備を図ります。たとえば、企業が出力50kWの太陽光発電を自社で購入した場合、約1,700万円ほどの初期費用が必要になります。また、設備のメンテナンス費用も別途かかります。
しかし、PPAの場合、太陽光発電設備の導入・メンテナンスにかかる費用の全額はPPA事業者が負担します。
2.メンテナンスの手間がかからない
太陽光発電は、発電量の低下や故障を防ぐため、定期的に設備の状態点検やメンテナンスを行う必要があります。しかし、PPAでは太陽光発電の点検やメンテナンスは、すべてPPA事業者が対応してくれるため、手間を大幅に省くことができます。
3.電気代の変動リスクを軽減できる
PPAの契約期間中は、太陽光発電から供給される電力の料金単価が固定されます。そのため、電力会社が電気代の値上げしても、PPAによって太陽光発電で供給される電気はその影響を受けません。太陽光発電で供給される電力の料金については、契約時にPPA事業者と協議のうえ決定します。また、PPAの契約期間が満了した後の太陽光発電設備は、PPA事業者から企業に無償譲渡されます。無償譲渡された後は、PPA事業者への電気代の支払いが不要となり、発電した電気を無料で使用できます。
4.非常用電源として利用できる
太陽光発電は、事業所の非常用電源としても活用できます。地震や集中豪雨などの自然災害によって、電力網に障害が発生した場合、事業所への電力供給はストップしてしまいます。たとえば、大規模な製造ラインを構える工場や、人命を預かる医療・福祉施設などの場合、停電によって事業所機能が停止してしまうと、経済的被害だけでなく、社会的信用の低下にも繋がります。太陽光発電が発電している間は、停電時でも電気を利用できます。また、蓄電池と連携して太陽光で発電した電気を貯めておけば、夜間や雨天でも蓄電池に貯めていた電気を使用できます。
5.企業の戦略として、オフバランス化が図れる
通常、企業が太陽光発電設備を自己資金で導入した場合、資産として貸借対照表に計上されます。一方、PPAでは、太陽光発電はPPA事業者の資産として扱われるため、企業側の貸借対照表上では、太陽光発電設備は資産として計上されません。このように、事業運営に活用している資産でありながら、貸借対照表に計上されない状態をオフバランスといいます。オフバランス化することで資産の増加を抑えて、総資産利益率(ROA)に影響を与えることなく太陽光発電設備を導入できます。また、経理・税務手続きや処理にかかる工数も削減できます。ただし、オフバランス化の可否は監査法人などの判断に委ねられます。そのため、十分な調査や協議が必要です。

PPA導入のデメリット

PPA導入のデメリットについては大きく2つ取り上げます。
1.電気料金が割高になる可能性がある
一般的に、PPAの契約期間は15年から20年です。PPAの契約期間中は、太陽光発電の電力を固定の料金単価で購入することになります。その間、電力会社が電気料金を引き下げれば、PPAの料金単価を下回る可能性があります。そのため、一定期間は負担する電気料金が高くなる場合があります。
2.発電設備の変更が難しいことがある
PPAの契約期間中は原則として、太陽光発電設備に変更を加えることはできません。そのため、事業所の移転や屋根の改装工事などで太陽光パネルの移設や一時的な撤去が必要になった場合、契約解除や違約金の支払いが発生する可能性があります。

引用:環境省 一部独自作成 「公共施設への再エネ導入第一歩を踏み出す自治体の皆様へ」

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は主にPPAの概要とそのメリットデメリットについてまとめました。次回では、その具体的なスキームや制度についてより詳しく見ていきます。
この記事が少しでも皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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