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環境にやさしい製造技術の最新トレンド

すでに、各業界の製造部門では環境配慮のためさまざまな取り組みが行われています。
特に、工場などの産業部門は発電所の次に多くのCO2を排出しているといわれており、これをいかに抑えることができるかが課題となっています。
今回の記事では、環境にやさしい製造技術について理解を深めていきましょう。

製造技術による脱炭素化施策

製造プロセスにおける脱炭素施策としては、再生可能エネルギーを使用することやAIなどを導入して高効率化することなどが考えられますが、今回は最新トレンドを踏まえ、昨今注目されている脱炭素化施策について紹介します。

スマートファクトリー

それではまず、スマートファクトリーについて紹介します。
スマートファクトリーとは、IoTやビッグデータ、AI、ロボットなどの技術やデータを活用し、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンのネットワーク化・最適化・⾃動化を図る工場を意味します。
これにより製造工程が可視化され、リアルタイムで製造の状況を把握することができ、高効率な生産ラインを実現することができます。この技術によって環境分野では、CO2が多く排出されている工程の特定や、それに伴った無駄なCO2の排出を抑える行動を実現することが期待されています。
これに加えて、近年はVUCA時代(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味する)とも言われるように、不確実性が高く、政治リスクや自然災害リスクによるサプライチェーンの断絶も多く起こっています。
そうした中でデータを可視化し、変化対応力を強化しておくこと、また迅速な変化に対応できるように備えておくことが大切になるでしょう。

循環型社会の形成に近づくための技術

次に製造のプロセスに着目をして、循環型社会を実現するための技術を紹介していきます。

引用:環境省「循環型社会を支える技術・システムについて」

廃棄物に関する技術

製造には様々なプロセスがありますが、ここでは廃棄に着目して、活用されている技術を紹介します。
産業廃棄物に関しての温室効果ガスの排出量は、10年ほど横ばいの状況が続いており、この状況を変革していくことが温室効果ガス削減の可能性を秘めています。
今回は、環境省の「循環型社会を支える技術・システムについて」を参照して技術を紹介します。
ここでは今後の発展の方向性として、「処分の技術・システム」として、DfE設計と連携した代替困難な有害物質の循環使用・環境への排出制御、過去の廃棄物の安定化・分解を行い、あわせて循環的利用や処分における CO2、フロン等の温室効果ガスの排出抑制を進めるという技術が紹介されています。
これでは難しいので具体的に説明すると、まず「DfE設計」とは環境配慮を行った設計のことを指し、この環境配慮設計を取り入れた技術を使用していくことが大切だということ。また、その上で有害なものをなるべく出さないようにすることや、自然に返せるものは返すように分解を行うといったものです。
こうした環境に配慮した技術の研究は様々な手法があり、廃棄物を生物の力を使ってリユースする方法である「廃棄物系バイオマス利活用技術開発」や、人体に悪影響にありながらも色々な製品に用いやすいアスベストの無害化に向けた技術開発「アスベスト廃棄物の無害化処理に関する技術開発が重点テーマとされています。
また、この他にも「処分場再生や長期管理を行う技術・システム」について述べられており、処分場からの長期的な環境負荷を継続的に制御するほか、処分場を資源の一時貯蔵・保管場所ともとらえ、必要に応じて既存処分場の再生を行うことの必要性について述べられています。

環境に優しい素材の使用・開発

また、環境負担を軽減するためには、どのような素材や材料を用いるかについても配慮が必要です。
ここでは「エコマテリアル」について紹介します。
「エコマテリアル」とは、「地球環境に調和し、持続可能な人間社会を達成するための物質・材料と定義されており、少ないエネルギーやクリーンな条件で製造できる材料、汚れた水や空気をきれいにする材料」のことをいいます。
例えばバイオマス素材と呼ばれるものは、原材料の植物が成長過程の中で二酸化炭素を吸収するため、カーボンニュートラルとみなされるほか、焼却時に二酸化炭素を排出しないため環境にやさしい素材であると分類されます。
日本では、「公益社団法人高分子学会」の中に「エコマテリアル研究会」という研究会が存在しており、産官学での研究も進んでいます。ここでは再生可能生物有機資源に関するモノマー・ポリマーの研究や、生分解性ポリマーの開発などについて議論されています。
これらは、石油などの化石燃料の消費を削減することができるといったことや自然環境の中で分解し、土壌や海水に戻すことができるといった特徴を持っており、プラスチックゴミを通じた環境問題を軽減するための施策としても有効です。

今後の可能性と課題

スタートアップの活躍

こうした最新技術の開発においては、スタートアップが大きな役割を果たしています。
COP28においてはスタートアップの技術を紹介するための展示が行われ、下記のような環境配慮に関連するスタートアップ企業が参加しました。
脱炭素を進めるための次なる施策として、こうしたスタートアップが活躍できる社会を考えることが重要になるかもしれません。

引用:資源エネルギー庁「COP28」で発信!日本の最先端の環境技術」

課題

最後に、こうした環境に優しい製造技術において、現在直面している課題について見ていきましょう。
ここでは人材面の立遅れを取り上げます。
環境分野はここ数十年で注目を集め始めた分野であり、まだまだ専門家が十分にいるとは言えません。
また、環境分野は複数の分野にまたがって専門知識が必要になることが多く、広い視野を持った人材が必要になります。こうした広範囲の専門分野にまたがって技術開発を進めて行くことのできる技術者をいかに確保するかが、大学、研究機関、企業、政府を通じての大きな問題であると言われています。
環境分野を推し進めるためにどのように人への投資をしていくかに注目が集まっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は環境に優しい製造技術について取り上げました。
今回の記事が少しでも皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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