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製造業におけるエネルギー効率化について

エネルギーの効率化はコスト削減の手段としてのみではなく、脱炭素・カーボンニュートラルのための施策としての役割も果たしており、エネルギーを効率よく利用し、より持続可能な製造手段が取られることによって環境・経済双方の価値が生まれます。
今回の記事では、その事例を取り上げ、詳しくみていきます。

 エネルギー効率化の重要性

脱炭素社会に向けたエネルギーの効率化

脱炭素社会に向け、製造業においてエネルギー効率を高めていくことは、重要課題です。
製造業のCO2排出量は、国内のCO2の総排出量に対して約30%と多くの割合を占めています。そのため、製造業が脱炭素化を進めていくことは重要課題と言えます。既に製造業においては、環境配慮のためにさまざまな取り組みが行われていますが、今回はその中でも、エネルギーの効率化に焦点を当てて説明します。
製造業では、エネルギーの使用を効率化するために、エネルギーの脱炭素化や製造工程における脱炭素化に取り組んでいます。例えば、化石燃料に依存しない熱供給機器を使用したり、エネルギー効率を最適化するためにIoT技術の導入を行ったりしています。
また、製造業と一括りに言ってもその幅はとても広いです。ここからは、セクター毎に取り組みをより詳しくみていきましょう。

エネルギー効率化の事例

自動車産業

自動車産業に関しては、エネルギー効率化の施策である「自動車生産時における効率化」について取り上げます。
まず自動車産業各社では、自動車工場におけるカーボンニュートラルを進める中、特に省エネに力を入れています。日本は再生可能エネルギーの調達が難しく、現状、すべてのエネルギーを再生可能エネルギーに代替することが容易でないことから、省エネによる脱炭素施策が主流です。
実際に生産ラインでは、CO2排出量が多い塗装の乾燥工程を塗料の低温硬化技術などで電力使用量を削減する取り組みや、冷却機能であるクーラントポンプのインバータ制御の改良やサーボモーターの効率化などで電力を低減しており、さらにはバイオマス燃料などの脱炭素燃料を活用した車両を工場内の部品物流や人員輸送にも活用し、CO2低減につなげています。
加えて、再エネの確保が容易ではないものの、再エネの調達を安定的に確保するための取り組みに着手する必要はあり、近年では「コーポレートPPA」のスキームなどが取り入れられています。コーポレート PPAは、企業や自治体などの法人が発電事業者から自然エネルギーの電力を長期に(通常 10~25 年)購入する契約のことを指します。
次にEVについて少し取り上げます。EVは電気によって走る乗用車で、カーボンニュートラルにむけ大きな役割を果たしています。しかしその一方で、現状製造の際に発生するCO2やエネルギーの消費効率が低く、走行距離が短いことが課題となっています。EVは、車両使用している際は、CO2を発生しないため環境に良いとされていますが、一転して製造の際は、多くのCO2を排出します。どのようにこの生産におけるエネルギーを少なく抑えるか、が重要な課題になります。EVの製造の際に発生するCO2削減やエネルギー消費の効率化が改善されることによって、カーボンニュートラルに大きく近づくことができるでしょう。

引用:一般社団法人 日本自動車工業会/一般社団法人 日本自動車車体工業会「自動車製造業における地球温暖化対策の取り組み」

機械産業

次に、機械産業のエネルギー効率化について取り上げます。機械産業では、工場において様々な部品の製造が行われており、それぞれの部品に対しての省エネ施策が考えられます。
今回は特に、主要な機械であるボイラー、コンプレッサー、空調についてみていきます。ボイラーとは、施設の熱源として使われることが多い装置です。蒸気を作る蒸気ボイラーと温水を作る温水ボイラーに、大きく分けられます。ボイラーにおけるエネルギー効率化は、高効率ボイラーを優先的に稼働することや排熱回収設備を導入することなどが挙げられます。排熱回収装置とは、ボイラーから出る排水や熱を他の装置に利用できる装置であり、燃料使用量の大きさ削減が可能になります。

引用:株式会社前田鉄工所「ボイラーって何?」

次に、コンプレッサーについてです。コンプレッサーとは圧縮機のことを指します。構造物を破壊する際やプレスする際に利用されます。コンプレッサーについても、高効率なものを優先的に稼働することが脱炭素に向けた取り組みとして有効です。さらに空気は、温度が下がるほど密度が大きくなるという性質を持つため、空気を圧縮するコンプレッサーの負担を少なくするために、コンプレッサーが吸う空気の温度を下げておくことも有効な施策になります。
続いて、空調についてです。空調のエネルギー効率化には、単純な清掃も大きな効果を生みます。清掃の有無によって冷房時では4%、暖房時では6%の省エネが可能になると言われています。また、比較的安価に導入できるものとして流体攪拌装置の導入も有効な施策になります。これは、空調の配管に装着することで圧縮機の負担を和らげることができ、15%〜30%の省エネ効果が見込まれます。

化学産業

エネルギー効率化のために、化学産業も大きな役割を果たしています。
特に脱炭素に関連する素材の開発という観点において、化学産業の役割は大きなものになっています。例えば、風力発電で使用される風車のセラミックに必要な接着剤や炭化ケイ素の生産などを行い、再生可能エネルギーにおけるインフラ技術向上に寄与しています。

またエネルギー効率に関して、近年特に力を入れられている分野が、ケミカルリサイクルの技術開発を含む、サステナブルな原料の開発です。ケミカルリサイクルについては、プラスチックのリサイクル方法の研究や自動車のタイヤを分解し、次の製品の原料としたりする実証実験が進むなど、原料の視点からカーボンニュートラルの実現を後押ししています。

引用:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は製造業におけるエネルギー効率化について説明させていただきました。今回の記事が少しでも皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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