【代表野村厳選】世界のカーボンニュートラル企業

Northvolt(スウェーデン・ストックホルム)

2040年までに新車販売台数の54%が電気自動車になり、2030年までに中国、インドの乗用車は100%が電気自動車に置き換わるという予測もあるほどに電気自動車の需要は拡大しています。その中でEV車に搭載するバッテリーはモーター以上に車の性能を左右します。
そのバッテリーを生産している企業として今注目を集めているのが、Northvoltというスウェーデンの企業です。Northvoltは2016年に設立してからわずか5年足らずで従業員1,000人を超え、これまでの資金調達総額は1730億ドル(約1.8兆円)にも成長しています。一体Northvoltとはどのような企業なのでしょうか。
今回はこのNorthvoltに焦点をあて紹介します。

Northvoltについて

企業概要

Northvolt(ノースボルト)はスウェーデンのバッテリーメーカーです。
2016年に設立し、その後自動車分野ではフォルクスワーゲンやBMWなどと、電力セクターでは風力世界大手Vestasや地元スウェーデン大手Vattenfallともパートナーシップを築いてきました。
CEOはテスラの元幹部であり、EV生産のためにはEV搭載用電池を量産しなくてはならず、その必要性からNorthvoltを創業しました。
事業内容は主に製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの最小化、原材料の持続可能な調達、リサイクルを目標としてバッテリーの生産を行っており、欧州のEV生産の鍵として大きな注目を集めている企業です。
このNorthvoltは、市場シェアこそTop10にも入っていませんが、蓄電池の製造競争において遅れをとっていた欧州がその遅れを取り戻すための策として大いに期待されています。

引用:Northvolt「Why Northvolt 」

世界1環境に優しいリチウムイオン電池

Northvoltのミッションは「世界で最も環境に優しい蓄電池を作ること」です。
その実現のためにリチウムイオン電池の主要材料である正極材の生産からバッテリーを構成する一つ一つの電池の製造、そしてそのリサイクリングに至るまで、バリューチェーンを自社内で構築し、そのライフサイクル全体で環境への負荷を考慮しています。原材料調達については2030年までに50%をリサイクル材料とすることを掲げており、製造に使用する電力についてもスウェーデンの水力発電や風力発電によって得られる電力を用い、環境への負荷を軽減しています。

ギガファクトリーの建設

また、Northvoltは積極的なギガファクトリーの建設を行っています。増加するバッテリー需要に対しては各社が各地にギガファクトリーを建設することにより、独自に大量生産・コスト削減することが可能になります。
特にNorthvoltのギガファクトリーはCO2排出を最小限に止めることや高度な自動化、先進的にセル生産技術を有しており、高い生産力を誇っています。
Northvoltは2020年に最初のギガファクトリーNorthvolt Ettを建設しました。スウェーデンのスケレフテオに最初のギガファクトリーを建設し、その後ドイツにもギガファクトリーの建設を行い、2023年にはカナダに建設する計画が発表され、そして2024年にはNorthvolt Ettの拡大も予定されています。

引用:Northvolt「Northvolt announces initial outcomes from its strategic review」

ギガファクトリーの拡大に向けた資金調達

2024年1月16日にリチウムイオン電池のギガファクトリーと電池リサイクル施設の拡張を目的とした資金調達により、欧州で過去最大規模のグリーンローンで50億ドル(約7,398億円)を調達したと発表しています。
グリーンローンとは、環境に配慮したプロジェクト(グリーンプロジェクト)のための資金を調達するために利用される融資のことです。今回の融資は欧州投資銀行(EIB)と北欧投資銀行(NIB)に加え、商業銀行23行を含むコンソーシアムによって提供されました。この取引は欧州のグリーンローンとしては過去最大規模であり今回の調達によってNorthvolt Ettの生産を拡大させる他、隣に接するリサイクル向上のRevolt Ettを拡張しサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。
この他にも現在Northvoltは欧州と北米での事業を拡大させるべく、エクイティおよびデッドファイナンスにて130億ドル以上の資金を調達しており、今後の可能性に期待が集まっています。

競合企業

Northvoltの競合企業

EV搭載の電池生産はアジアが先行しており、競合としては業界シェア1の中国企業CATLや、韓国のLG Chem、日本ではパナソニックが挙げられます。
中国のCATL(Contemporary Amperex Technology Co. Limited)はEV電池について市場シェアの30%以上を占めており、業界のトップシェアを誇ります。大規模生産による低コスト化を強みとしており、中国のその大きな需要によって支えられています。最近では2023年に神行超充電池という最新型の電池の開発を発表しています。これは条件が揃えば10分間の充電で400キロメートルの走行が可能になるという高効率の電池であり、2024年に車両搭載予定であることから注目が集まっています。
また、パナソニックは2014年に世界最大規模のリチウムイオンバッテリー工場の建設に関してテスラとパートナーシップ関係を結んでいます。また2024年に量産開始予定のものとして、バッテリーセル「4680」の開発を行っており、この「4680」の利用により車メーカーは溶接の回数を減らすことができ注目が集まっています。「4680」電池の作成には電極の長さから高度な技術が必要でありパナソニックならでは技術の優位性が伺えます。
以下では他社と比較した際のNorthvoltの優位性について述べていきます。

企業としての強み

持続可能性への注力

電池生産においてはアジアメーカーが技術開発に先行している状態になっています。
そうした中でのNorthvoltの特異性は生産工程全体で再利用可能なものを用い、原材料も持続可能な方法で調達、さらにはリサイクルシステムも開発し供給するバッテリーは全て再利用できるという点にあると言えます。環境意識が高い水準にあるヨーロッパにおいて、またリチウムイオン電池などの燃料が現地調達される機運が高まっている中で、Northvoltの環境意識の高さは大きな優位性になり得ます。

戦略的協業

また、Northvoltはフォルクスワーゲンやボルボの大企業から出資を受け、協業しています。この欧州有力企業との協業という点がEVバッテリーの領域で今後も開発を加速させていく上で大きなアドバンテージになります。
例えば2019年に、フォルクスワーゲンとNorthvoltが協力して、ドイツのSalzgitter(ザルツギッター)に第2工場を建設することを決めたことや、ボルボとNorthvoltがジョイントベンチャー(合弁会社)を設立し、大規模な電池工場の建設を計画したことがこれに当たります。こうした協業により、安定した需要を確保と技術開発の加速を行うことが可能になります。

最近の動向

BMWとの契約破棄

2024年6月20日に、BMWはNorthvoltへのEVバッテリーセル20億€の注文をキャンセルしたことをリリースしています。一部報道では、これはNorthvoltがバッテリーの小容量生産に難儀していることから納品が遅れ、BMWはSamsungに取引を委託したとされています。
また、BMWの広報担当者は「NorthvoltとBMWは、Northvoltのリソースを次世代バッテリーセル開発に注力させる戦略目標で合意した」「BMWは欧州で循環/持続可能なバッテリーセルの高性能メーカーを設立することに引き続き強い関心を持っている」としており、今後の取引には注目です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はNorthvoltについてご紹介しました。
蓄電池の製造競争で遅れをとっていた欧州ですが、Northvoltはコスト面だけでなく、環境負荷の面でも優れた企業です。今後の活躍が期待されます。
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