【代表野村厳選】世界のカーボンニュートラル企業

Mootral (イギリス・ウェールズ)

「温室効果」というと自動車の問題やエネルギー問題を想起しがちですが、畜産分野における温室効果ガスについても目を背けてはなりません。畜産分野においては「牛のゲップ」や「畜産の排泄物」によるメタンの排出が問題視されています。メタンはCO2と比較し温暖化への影響が大きい温室効果ガスであり、そのメタンの4割ほどが畜産分野から排出されているとも言われています。
こうした背景から、Linkholaでは畜産分野における環境負荷軽減の取り組みとして、JA鹿児島県経済連や株式会社AmaterZ、そして九州大学と共同で「未来畜産GHG排出量削減-Kモデル」の構築に向けプロジェクトを行なっています。具体的には牛・豚・鶏、3つの畜産のボランタリークレジット化に取り組んでいます。
今回のご紹介するMootralはその畜産分野におけるメタン排出を削減するために技術・サービスを提供する企業であり、Linkholaが行う取り組みの先がけとも言える企業です。
今回はこのMootralに焦点をあて紹介します。

Mootralについて

企業概要

Mootral (ムートラル)はイギリスとスイスに拠点を置く企業で、主に牛や羊などのメタン排出を削減するための技術・サービスを提供している企業です。
Mootral (ムートラル)は、2018年にスイス気候財団から資金提供を受けて設立しました。創業者のThomas Hafnerは、30年以上にわたるライフサイエンス分野での起業を経験しており、このMootralは動物による​​メタン排出の削減に着目して設立されました。メタンはCO2よりも25倍以上強力な温室効果ガスであり、その削減は気候変動緩和に大きな影響を与えるとされています。Mootralの技術は、この問題に対処するための手段として注目されているのです。
またMootralは、技術面のみではなく「#JoinTheMOOvement」というハッシュタグを使用してソーシャルメディア上でキャンペーンを展開するなど、社会的な側面でも注目を集めています。

引用:Forbes
「The Net Effect—The Entrepreneurs Putting Greenhouse Gas Offset At The Heart Of Their Business Models」

競合企業

Mootralの競合企業

バイオテクノロジー業界においては、様々な企業が多様なアプローチで製品の開発に取り組んでいます。今回は畜産や農業の脱炭素といった観点で競合になりうる企業について紹介し、比較していきます。
ここでは競合としてハワイを拠点とし、海藻ベースの農業排出削減ソリューションを提供するSymbrosia(シンブロシア)とオランダに拠点を置くRoyal DSMについて見ていきましょう。

Symbrosia

Symbrosiaは2018年に設立され家畜のメタン排出量を削減する天然海藻の飼料添加物を開発しています。この企業は牛の消化プロセスにおいて、腸内発酵の際に自然発生するメタンを科学的に低減することで家畜のメタン排出を削減する飼料添加物を作成しています。これにより、飼料にSymbrosiaの製品を加えることでメタンの排出が最大で80%削減することが可能になります。2022年には約9.5億の資金調達を行い、ハワイ自然エネルギー研究所の海洋パーク内の実証施設を拡大していることやCornell大学と共同で研究を行なっていることなどから今後の拡大も見込まれています。

Royal DSM

DSMは栄養、健康、サステナブルな暮らしといった分野で事業を展開している企業です。同社は『Bovaer®』という商品を開発し、動物飼料添加物の分野でのリーディングカンパニー的存在となっています。『Bovaer®』は飼料に混ぜるだけでメタンの生成に使われる酵素を抑制するため、メタンの排出を抑えることができるといったものでグローバルに販売されています。現在も牛のメタン排出を抑制するための飼料添加物の開発に注力しており、特に3-NOP(3-ニトロオキシプロパノール)という化学物質を使用してメタン生成を抑制する技術が注目されています。

企業としての強み

天然飼料サプリメントと技術力

Mootralは研究開発を重ね、化学薬品を使用しない安全なサプリメントを用いてメタンの削減に有効な飼料を開発していることが特徴に挙げられます。
天然飼料サプリメントは、ニンニクと柑橘類の果実から抽出されたバイオフラボノイドを配合し、反芻動物の腸内発酵で生成されるメタンガスの量を大幅に削減します。このサプリメントの開発にはEnterix Advanced技術という特殊な技術が使用されており、その特許技術がMootralの大きな強みになります。Enterix Advanced技術は、ヨードホルムというメタン阻害剤とニンニク由来の活性化合物を組み合わせるもので、メタン排出を最大50%削減することが可能です。この技術は高価な設備投資を必要とせず、既存の飼料チェーンに簡単に組み込むことができます。
Mootralは、この技術を2026年までに規制当局から正式な承認を得ることを目指しており、今後10年間で3億頭の牛に普及させる計画です。

引用:Mootral「Home」

最近の動向

カーボンクレジット

Mootralはカウクレジットというコンセプトを提案し、実際に販売しています。
これはMootralの製品を家畜に与えることで削減できたメタンガスをカーボンクレジットと交換できるようにするといったものです。
CEOであるトーマス・ハーフナーは、CNN Businessにおいて、「カーボン・クレジットの販売収益は農家に還元され、飼料の初期費用を補助し、さらに買い足してもらうことができます。炭素クレジットは、気候変動に配慮した技術の導入を促進するための重要な刺激手段です。」と述べており、現在、UKプロジェクトはクレジット発行済み。次は米国プロジェクトも開発を進めているという状況です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はMootralについてご紹介しました。畜産分野における脱炭素は今後益々喫緊性をます中で、Mootralの今後の活躍が期待されます。
また、弊社では、業種業界を問わずすべての企業がカーボンニュートラルに向けて取り組むことができるEARTHSTORYというサービスを展開しています。このサービスは、企業が削減した二酸化炭素量を計測し、その環境価値を取引することができる画期的なシステムです。
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