【代表野村厳選】世界のカーボンニュートラル企業

Neste (フィンランド・エスポー)

航空業界の成長は目覚ましく、国際航空運送協会(IATA)の予測によると、2050年までに年間旅客数は100億人に達すると見込まれています。
一方で、航空部門は世界のCO2排出量の約2%を占めており、この数字は今後さらに増加する可能性があります。こうした状況下で、航空業界の脱炭素化は急務となっており、持続可能な航空燃料(SAF)の開発と普及が注目を集めています。
そこで今回は、SAF供給のリーディングカンパニーであるNesteに焦点を当てご紹介します。

Nesteについて

企業概要

Nesteは、1948年にフィンランド政府によって設立された石油会社です。
当初はフィンランドの石油供給を確保することを目的としていましたが、のちに持続可能なエネルギーソリューションの開発に事業を転換しました。
2000年代には100%再生可能ディーゼル燃料の生産を開始し、現在、Nesteは世界最大のSAFおよび再生可能ディーゼル燃料の生産者となっています。世界中の主要航空会社や貨物運送会社との提携を拡大し、航空業界全体の脱炭素化に貢献しています。
同社は、2030年までに顧客の温室効果ガス排出量を年間少なくとも2,000万トン(CO2換算)削減することを目標に掲げています。

持続可能性への取り組みの概要

同社で行っている事業全般が持続可能性への貢献そのものであることなどから、すでに多くの功績や評価を得ています。
まず同社が実現した顕著な温室効果ガス排出削減として、2023年だけで再生可能製品における排出量をフィンランドの年間CO2排出量の約17%に相当する、1,180万トンの削減に成功しました。
また、使用済み調理油や動物性脂肪廃棄物の分野については、100%再生可能な原料からSAFを製造し、従来の化石燃料と比較してライフサイクル全体で最大80%のCO2排出量削減を実現しています。
今後もSAFの生産技術や原料の多様化に向けた研究開発への投資を積極的に行っていくことから、持続可能な未来に向けたさらなる革新的な取り組みが期待されています。

脱炭素化が進む航空業界

航空業界のエネルギー事情

航空はヒトやモノの輸送における大きな要であり、日々膨大な数の機体が空を飛び交っています。
機体を飛ばすため非常に多くの燃料を必要とする実情のなかで、輸送国際民間航空機関(ICAO)は、2050年までに国際航空からのCO2排出量を2005年比で50%削減するという目標を掲げています。この目標達成に向けて、航空各社は機体の軽量化や運航効率の改善などに取り組んでいますが、最も効果的な手段の一つとして注目されているのがSAFの導入です。

SAFエネルギーとは

ここでは、具体的にどういった点が環境に優しい航空燃料として評価されているのかを見ていきます。
そもそもSAFとは、使用済み食用油や動物性脂肪の廃棄物など、100%再生可能な原料から製造される航空燃料です。特にNesteが開発したSAFは独自のNEXBTLテクノロジーを活用しており、従来の化石燃料と比較してライフサイクル全体で最大80%のCO2排出量削減が可能です。その生産プロセスは、原料の前処理、水素化処理、精製の3段階で構成されています。しかし現状では製造面において、コストが従来のジェット燃料よりも2〜10倍と高く、これが普及の障壁となっています。

引用:経済産業省 資源エネルギー庁「飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?」

SAFエネルギーの利点

その最大の利点は、既存の航空機エンジンや給油インフラをそのまま使用できることです。これによって航空会社は大規模な設備投資を行うことなく、すぐにCO2排出量の削減に取り組むことが可能になります。
また、SAFは、非CO2排出物(粒子状物質など)も削減できるため、総合的な環境負荷の低減に貢献しており、Nesteのデータによれば従来の化石燃料と比較して、粒子状物質の排出を最大90%、硫黄酸化物を100%削減が可能であり、大気質の改善にも大きく寄与します。

競合企業

競合企業には、フランスのTotalEnergiesやアメリカのRenewable Energy Group(REG)があります。
TotalEnergiesは再生可能エネルギーと持続可能な燃料の分野で積極的に事業を展開しており、SAFの生産にも注力しています。2030年までに年間150万トンのSAFを生産する計画を立てており、これは世界市場の約10%を占めると予想されています。
また、Renewable Energy Groupはバイオ燃料の大手企業で、SAFの製造にも取り組んでいます。REGのSAFは、廃油や動物脂肪などの00%再生可能資源を原料としており、化石燃料を一切使用していません。

化石燃料からの転換

主要な顧客と提携先

Nesteは、全日本空輸(ANA)、デルタ航空、ルフトハンザ航空など、世界の主要航空会社にSAFを供給しています。また、DHL、UPS、Amazon Prime Airなどの貨物航空会社とも提携し、航空貨物輸送の脱炭素化にも貢献しています。
特に注目すべき事例として、2024年3月にNesteはエミレーツ航空と提携し、世界初となるA380型機での100%SAFによるデモフライトを実施しました。この画期的な実験は、将来の100% SAF承認に向けた重要なステップとなりました。

日本で展開されるSAF供給

日本では、2020年からANAとの提携によりSAFの供給を開始しています。2023年には、成田国際空港でのSAF供給体制を整え、日本の航空業界の脱炭素化に向けた取り組みを加速させています。具体的には、成田空港に専用のSAF貯蔵タンクを設置し、パイプラインを通じて直接航空機に給油できる体制を完了させています。これにより、SAFの安定供給と効率的な運用が可能となり、日本の航空会社のSAF利用が拡大しています。

今後の動向

新技術への投資

世界的なSAF需要の増加に対応するべく、同社では生産能力の拡大と新技術への投資を図っています。
2024年初頭までにSAFの年間生産能力を150万トンに拡大する計画を進めており、シンガポール製油所拡張を通じては、年間100万トンの新たなSAF生産能力を追加整備しました。
また、SAFの原料多様化に向けた研究開発投資については、藻類、都市固形廃棄物、リグノセルロースなど、新たな原料の活用可能性を探っており、より持続可能で効率的なSAF生産技術の開発に取り組んでいます。より多様な原料からの生産を追究している点については、都市固形廃棄物からのSAF生産が2025年までに商業化される可能性があり、原料供給の多様化と拡大に大きく貢献すると期待されています。これらの新技術が実用化されれば、SAFの生産コストを大幅に削減し、普及を加速させることに繋がります。

引用:農林水産省「230908_8-6.pdf」

まとめ

Nesteは、SAF市場のリーディングカンパニーとして、航空業界の脱炭素化に大きく貢献しています。同社の取り組みは、環境負荷の低減だけでなく、循環型経済の実現にも寄与しています。
今後、SAF市場の拡大とともに、Nesteの役割はますます重要になっていくでしょう。Nesteの革新的な技術と持続可能なビジネスモデルは、航空業界の未来を変える可能性を秘めています。
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