【代表野村厳選】世界のカーボンニュートラル企業

Loam Bio(オーストラリア・オレンジ)

現代の農業は、施設栽培での電力使用や作物の分解過程で生じる温室効果ガスの排出など、気候変動に無視できない影響を与えています。
農業分野における脱炭素化への取り組みが世界的な課題となる中、革新的なアプローチで注目を集めている企業があります。それがオーストラリアのスタートアップ企業「Loam Bio」です。
今回は同社が未来の農業の在り方に向けて、どのような取り組みを行っているのかについてご紹介いたします。

Loam Bioについて

企業概要

Loam Bioは、オーストラリアを拠点とする革新的なバイオテクノロジー企業で、土壌の健康と農業生産性を目指し、さまざまな技術開発を行っています。2011年にシドニー大学の研究イニシアチブとして設立され、年々会社規模を拡大させながら炭素隔離と持続可能な農業の実践を推進するミッションをさらに進めています。
同社は最先端のテクノロジーを活用して、炭素排出量を削減するだけでなく、農家における土地の回復力、生産性の向上を支援しています。

引用:Carbon Herald「Loam Bio Brings Its Carbon Farming Solutions To The US」

 農業に問われる持続可能性

深刻化する農業による温室効果ガス排出

農地開発による森林破壊、化学肥料の使用、家畜の飼育など、様々な農業活動が温室効果ガスの排出源となっており、この状況は年々深刻化しています。さらに皮肉なことに、気温上昇は農業そのものにも深刻な打撃を与えることが予測されています。気候変動による干ばつや豪雨の増加、害虫の分布域拡大、土壌劣化の加速により、2050年までに主要作物の収量が最大30%減少する可能性があると警告されています。

世界の農業脱炭素化への取り組み

このような危機感を背景に、世界各国で農業の脱炭素化に向けた取り組みが加速しています。EUは「Farm to Fork」戦略を通じて2030年までに化学肥料の使用を30%削減する目標を掲げ、米国では農業由来の炭素排出権取引市場が急速に発展しています。
また、世界銀行は途上国における気候変動対応型農業への支援を拡大し、民間企業による技術革新も活発化しています。

Loam Bioの炭素関連技術

微生物による炭素貯蔵技術

土壌に含まれた炭素処理を最適化する技術として、Loam Bioは独自の微生物技術「CarbonBuilder」を開発しました。これは種子に直接コーティングする菌類接種物で、植物の成長過程で光合成により生成される単糖を、安定した炭素化合物(メラニン)に変換します。このメラニンは土壌の微小凝集体に蓄積され、長期的な炭素貯蔵を実現します。農家は適用後1年目から効果を確認でき、土壌中で最も安定した形態の炭素を増加させることができます。

引用:Loam Bio「Building soil carbon in cropping systems just got easier」

炭素クレジットプログラム

Loam BioはSecondCropと位置付けて、農家に向けた包括的な炭素農業プログラムを展開しています。
このプログラムでは、同社独自のCarbonBuilder技術を用いた微生物種子処理により土壌炭素の隔離を促進し、初期費用なしで参加できる仕組みを構築しています。農家は登録から土地管理戦略の立案、炭素レベルの測定・検証まで一貫したサポートを受けながら、最終的にはオーストラリア炭素クレジット単位(ACCU)を獲得することができます。

競合他社

Loam Bioの革新的な取り組みがますます注目される中、同じオーストラリアを拠点とする農業テック企業も、それぞれ特色のあるアプローチで持続可能な農業の実現に取り組んでいます。
以下に、主要な2社の最近の動向と特徴を紹介します。

CarbonLink

CarbonLinkは、土壌炭素隔離に特化したエンドツーエンドの炭素農業ソリューションを提供する企業です。同社は、初期の資産評価からオーストラリア炭素クレジット単位 (ACCU) の獲得まで、さまざまなサービスを展開し、国内全土に事業を拡大しています。
同社は、土地の生産性向上と炭素クレジットの創出を通じて、オーストラリアの農業従事者に新たな経済的機会を提供しています。

引用:CarbonLink「New soil carbon farming equipment increases soil sampling turnaround」

AgriWebb

AgriWebbは、持続可能な牧畜管理を支援するデジタルプラットフォームを提供するオーストラリアのアグリテック企業です。
群れの健康状態や牧草地の状態に関するリアルタイムの分析を提供し、最近ではメタン排出量と炭素隔離の追跡機能も追加しました。現在、世界6,000万エーカーの土地で1,400万頭以上の家畜を管理しており、オーストラリアと英国を中心に持続可能な畜産業のデジタル化を推進しています。

引用:AgriWebb「AgriWebb Map Insights」

今後の展望

炭素隔離技術の向上に向けて

Loam Bioは2021年に4,000万ドル、その後シリーズBラウンドで7,500万ドルという大規模な資金調達に成功し、この資金力を活かして2023年には農家向けの包括的なカーボンソリューションとしてSecondCropカーボンプロジェクトシステムとCarbonBuilderをローンチしました。
この統合システムは、炭素隔離技術と収益化モデルを組み合わせた画期的なサービスとして、農業用カーボン市場における主導的地位の確立とグローバルな展開が期待されています。

まとめ

農業分野が持続可能性と炭素管理にますます目を向ける中、Loam Bioは土壌の健全性と炭素隔離に対する革新的なアプローチで際立っています。
独自の微生物技術と包括的な炭素測定システムを通じて、脱炭素化への対応と農家の繁栄を同時に実現する同社の取り組みは、持続可能な農業の新たな指標となっています。気候変動対策が待ったなしの今、私たち一人一人が環境に配慮した農業の実現に関心を持ち、Loam Bioのような革新的な取り組みを積極的に支援していくことが、より良い未来への第一歩となるでしょう。
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